大海のボトルシップ

手作り、自家製、自給自足といったものが、本当の満足につながるのならそれでいい。


ケチ、節約、買うには高すぎるといった理由にはじまり、出来上がったものが市販品に大きく届かない代物になったとき、そこにはガマンというストレスが生じているかもしれないことには、気をつけなければいけない。


材料費もバカにならない。効率よく生産するスキルや専門技術もなく、個人でひととおり揃えて作ってみると、市販品を買ったときのコストを軽やかに、なんなら空中で一回転半ヒネリのひとつでも加えて超越してくる。


市販品を買うより安くあがったし、質も高くて大満足!という結果は稀な部類の大成功と思っていいかもしれない。その人の慧眼、能力の高さ、もしくはたまたま偶然ラッキーパンチの賜物だろう。


手作り行為から得る1番大きなものは、やはりそれを作った経験そのものだろう。手足や頭を使って取り組んだ過程。うまくいったこと、いかなかったことを分析する振り返り。取り組む前の予想図と実際に出来たモノとの差異に込められた学びを、どれだけ自分が掬えるか。そこにはきっと、市販品を買うより高くついた分を回収し、あり余るくらいの価値が秘められている。


自分で自分のためのワークショップを開くようなものなのだ。講師代がかからないし、失敗のリスクが大きい分、回収できる学びも大きいと思えはしないか。手法だけ真似して、なんとなくうまくいってしまった手作り品を家に持ち帰り、飾っておくのも悪くない。


醜い失敗作品で散らかった部屋から、次こそは!と思わせるモチベーション、執念が沸き起こるようなことがあったとしたら、その人の人生は手作りの道に大きく舵を切って進んでいくことになるだろう。


おめでとう。


凪いだ海か、荒海か。


自分で選んだ航海だ。


幸運を祈ろう。