世の中の先輩(ときには後輩)たちによって生み出された教訓が、誰にでも使い勝手の良い形にあらかじめ整っているとは限らない。
ときにはいびつな原石みたいな状態のまま放り出され、受け手が自ら加工することで初めてその輝きを確認できるようなものもある。
その過程がまた、楽しみにもなっている。
公共性の高いものはなるべく、誰にでも使いやすい配慮のされたデザインが普及するべきかもしれないが、一体全体こりゃなんだ?どうやってこのまま使えってんだ?みたいなユニークな石ころを探し、自分で使いやすい形に加工して、彩色を施し、眺めるのも悪くない。
川は上流に行くほど、大きくいびつな石ころに出会えるだろう。
流れにもまれ、削れて丸くなる前の造形にたくさん出会える。
流れそのものも激しくて、粗く雄々しい地層が露出していたりする。
僕らの生まれる背景となった、厳しく不安定な激動の時代の片鱗。
安定した穏やかな流れに落ち着く前の源流。
ものは高いところから低いところに向かって落ちる。
水もそのようにして流れる。
逆行するにはエネルギーがいる。
水があたためられて蒸発し、再び上空に運ばれるのもエネルギーがあるからだ。
この地球でいちばん高いところに位置する、エベレスト。その頂きに、かつての海底生物の痕跡があるらしい。
長い年月を経て、大陸が移動し、ぶつかり合って盛り上がる。
底にあったものが天井に。
結集していたものは散り散りに。
生きているというのはユニークな状態だ。
一瞬のまぼろしみたいな、夢を見ている。