血の縁

生物と無生物の間を思う。


呼吸をやめて、冷たくなる、その前と、後。


一体何が違うのだろう。


「生」は「秩序」だ。


体を、温度を、保っている不自然な状態。


「生」が、「秩序」が失せると、それらは解きほぐれて、ちりぢりになっていく。


永遠には保てない。


いれものを替えて、移り変わっていく。


たくさんの名前も知らない先祖のおかげで、今ここに自分があることを思う。


自分もまたその中のひとりになって、解きほぐれていく明日を待つ運命にある。


昼間読んだ本に、アインシュタインのことが書いてあった。


湯川秀樹さんの書いた、エッセイだった。


湯川さんがアインシュタインに会った時のことが綴られた数ページを読んだ。


それまでよく知らなかったアインシュタインの人となりが、本当に存在したひとりの人として感じられた。


世界中に名が知れる、偉業をなしたアインシュタイン。


彼にも、誰に名前を知られることもない無数の先祖たちがいる。


彼らの存在なしには、アインシュタインも誕生することはない。


アインシュタインがいなくても、その偉業にかわるような発見を、遅かれ早かれ別の誰かがしたかもしれない。誰によるものだとしても、人類にとっては大差ない。


親子の関係を「血のつながり」なんていう。


実際につながっているのは、血液だけじゃない。


それ以外のものの方が多いだろう。


人類全体に、ひとつの「血潮」をみる。