神経回路の異動令

春は、人事異動がありますね。


組織がそれまでの動きを取り戻すのにも、少し時間がかかったりします。


そのことはまるで、バラバラになって急ごしらえで適当な神経回路をつなぎ合わせられた、リハビリに挑む身体のようです。


それまでとは違った筋道どうしが対にされ、まず最初はろくに動けなかったりします。片足どうしを縛り付けられておこなう、二人三脚のようでもあります。


なんでもいいから走り出そうとしたら、一歩目でびたん!と転んでしまう…


縛り付けられた足を動かそうとしたら抵抗を覚え、お互い立ち尽くしたまま顔を見合わせてしまう…


どこがどうつながっているのか、まずは声を掛け合いながら、確認していくしかありません。そのつながり方をそれぞれに認識し、ああ、自分がこう動けば相方はこう動くのかというのが徐々にわかり、そのことが組織全体にどう響いていくのかがようやく見えてきた頃には季節が巡り、また配置換え…なんてことを繰り返しているのかもしれません。


しかし一方で、めちゃめちゃな組み方をされたとしても、次第に馴染み、適応を見せる人間のラフさ、応用力や柔軟性に感心します。


それこそ、リハビリの成果が実って、身体が思うように動きはじめるさまに重なります。


各神経間の連携がとれて、各部が協調し、ようやく大きなひとつの、身体が動く。


リハビリの経験はないけれど、初めて組み込まれた環境に馴染むまでの苦しみならば、僕にも経験があります。


そうしたときに、寄り添い、見守り、ときに手を差し伸べてくれる伴走者がいたら、どんなに心強いことかと思います。


うまくいっていないところが現れると、それまでは関わりのなかった小さいまとまりの間で、助け合いが生じる。そうして、より大きな部位が、身体が、地域が、社会が、動きはじめる。


ひとりひとりが、可能性を秘めた神経回路のようです。