早朝のコンビニ

早朝のコンビニエンスストアで、コーヒーを飲んでみる。住んでいるところからそう遠いところでもないおなじみの街の中でも、いつもとは違う時間帯に訪れると、それだけで旅に出かけたような気分が味わえる。否、それこそが旅なのだ。お金や時間をたくさんつかって、遠くへ行くことだけが旅なのではない。


田無という街がある。東京都のほぼ中央部に位置する武蔵野台地に乗っかっていて、青梅街道の宿場町として栄えた場所と言われている。僕は、田無に隣接する保谷の出身だ。18年ちょっと前に、旧田無市と旧保谷市がくっついて西東京市となった。だから、現在は僕の住まいと同じ市内にあるのが、旧田無エリアということになる。


丸3年前あたりから、僕はこの田無という街に通うようになった。この地域にある職場に勤め始めたからだ。昼休みにぶらぶらしたり、あるいは仕事を通して訪れたりして、この地域に関する情報を増やしていった。


幾度となく観察の対象にしてきたこの街だから、もういいよという気持ちにもなる。一方で、観察点をちょっとずらしてみるだけでも、また新しい発見がある。通り過ぎることに慣れてしまうのだ。未遭遇の存在は、身の周りにいくらでもある。距離が近いからこそ、盲点となる側面があるのだろう。


コンビニのイートインスペースに設けられたカウンター席。自分の隣に、知らない人が腰かける。これまでにすれ違った人かも知れないし、両者がこれまでで最も近づいた瞬間だったかもしれない。パソコンを立ち上げて何かをしていたが、その人はいつの間にかどこかへ行ってしまった。


窓の外の空の色が変わる。見慣れた色になってきた。早朝という時間ともまた、僕はすれ違いを繰り返す。


お読みいただき、ありがとうございました。