かゆくさせない蚊は死に絶えたのか?

……また、虫が飛んでる……今日何度か目にしているけれどあれはそう、蚊じゃないか!」ということで、ほどよい田舎指数を持つ西東京という地域に住む私は、今年になってすでにもう蚊を認知しております。


蚊に刺されることに付随して生じるもろもろの不快感を、ほとんどの人が知っているでしょう。蜂に刺されたことがない人はたまにいるかもしれませんが、蚊ともなればその煩わしさは共感のネタにもなります。


「痛い」はおおごとと捉えられがちですが、「かゆい」はないがしろにされがちです。「腰が痛いんだよ」という人があれば、「お気の毒に」と声をかけて気遣いを見せる人があるかもしれませんが、「腰がかゆいんだよ」だったらどうでしょう……「え?……あ、うん。かけば?」という具合に、拍子抜けしてしまう人もあるかもしれません。


かゆいというのも、慢性化するとつらいものです。かきむしりすぎると、血が出ることだってあります。それはもはや、「かゆみ」を通り越して「痛み」です。かゆみは、痛みの予兆なのです。


ところで、なんだって蚊は、僕をかゆくさせるのでしょうか。血を吸ってもかゆくさえならなければ、蚊の生存率はもっと上がるのでは? と考えたことは、一度や二度ではありません。


生き物の進化は、ある特徴を備えた個体が生き残って子孫を残すことでなされる、という考え方があるそうです。つまり、キリンの首は初めから長かったわけではなく、生き残って子孫を残した個体に首が長いという特徴があったから、その特徴が長い時間をかけて種全体の特徴として残された、といった考え方です。


その考え方にならって蚊について考察するならば、血を吸った対象をかゆくさせる理由などないのだけれど、結果として、吸われた者をかゆくさせるという特徴を持った個体の蚊が生き残り、子孫を残すというプロセスを経て、吸われた者をかゆくさせるという特徴が蚊という種全体の特徴となった……と考えられるのではないでしょうか。


どうして、その特徴が生き残りに有利にはたらいたのか、僕にはわかりかねます。刺された者をかゆくさせるという特徴は副作用みたいなもので、その物質は本来、持ち主である蚊を強く健康に保つなにかしらの物質なのかもしれません。刺した対象をかゆくさせるために、そのような性質を獲得したのではない……ということです。単に、捉え方が違うだけともいえそうですが。


「なんで◯◯は△△なの?」と、つい僕は問います。意思による選択によって△△という特徴を獲得した……という順序で仮説を立てようとしがちですが、真実は「◻︎◻︎という特徴を持った個体と、△△という特徴を持った個体がいた。なんらかの理由(たとえば、その時代の気候や環境といった面での理由)により、△△という特徴が有利に作用したため、△△という特徴を持った個体が多く生き残り、それらが子孫を残した結果として△△は種全体の特徴となった」とするのが、今のところ適切な理解といえるのかもしれません。


「かゆみ」のような小さなことや、ある時点での他人事は、巡り巡っておおごと、自分ごとに発展する……というところを大事にしたかったのですが、本文のほとんどが「蚊」に乗っ取られてしまったかのようです。お読みいただき、ありがとうございました。