Reminder

過失は起きる。そのとき、起きてしまったことは、過ぎる。そのときには、そうするしかなかったことかもしれない。だれも止められなかったことかもしれない。


ぼくは、忘れてしまう。ほんとうは大事かもしれないことさえ、忘れてしまうことがある。忘れている間は、そのことは、ぼくにとって、なかったことになっている。それが、その瞬間のぼくにとっての真実だ。だって、存在しないことになっているのだから。忘れてしまっている状態っていうのは、そういうことだ。ないものは、感知できないし、もともとないものを思い出すことはできない。


ここに、事実との相違がある。事実として、それはあった。もともとなかったもの、というわけじゃない。でも、ぼくはそれを忘れてしまっている。その瞬間のぼくにとっては、忘れてしまっていて、その存在に気づくことができないものは、その瞬間のぼくにとっては、存在しないというのが真実だということになってしまう。


真実と事実は、ときに等号で結ばれない。


何かきっかけがあって、ぼくは忘れていたことを思い出せる場合がある。その瞬間のぼくにとっては、ないとしかいいようがなく、感知しようもなかったものを、いまこの瞬間のぼくのなかに、生きたものとして在らしめることができる。


ぼくは、すぐにものを忘れてしまう。でも、思い出すための仕組みをじぶんの身の周りに仕掛けることができる。


お読みいただき、ありがとうございました。