最強のヨーグルト

矛盾ということばの由来の話はけっこう有名ですよね。最強の矛と最強の盾、どちらが最強かと指摘されて、その両方の売り手である商人がたじろいでしまう話です。この、「では、その矛でその盾を突いてみよ(どうなるか?)」と言った人がすごいなと思います。商人のことばのおかしさに気づいたこと自体が、発明品みたいなものです。矛盾ということばひとつでおかしさ、食い違いを表現できるようになったのは、この発明品のおかげです。そんなん、おれでも気付けるわと思う方もおられるかもしれませんし、実際その商人のデモンストレーションを見る群衆の中にいたら、そのおかしさに気づくのが僕である可能性だって、ないわけじゃないはずだとも思います。


武器で戦う機会が僕にはないので、そもそも、最強の矛なんて欲しくありません。同様に盾も欲しくないです。最強にうまいヨーグルト、だったらちょっと味見してみたい気もしますが、すごく高値でその権利が買えるとかだったら、いりません。安くても、あんまり欲しくないです。ふつうの、普段のヨーグルトで満足しています。


よくじぶんでじぶんのためにペペロンチーノをつくるのですが、これが妙にうまいことがあります。世界一うまいんじゃないかしらと思うこともあるくらいです。同様のことが、味噌汁で起こることもあります。なんでもない肉野菜炒めだとか、カレーだとかのときもあります。


じぶんのためにしたことが最高にきもちのよい結果を招くことって、よくあるみたいです。そのときって、世界一とかべつにどうでもよくって、最高に気持ち良くなれています。


このすんごい値段のたっかぁ〜〜いお味噌とだしをつかって味噌汁をつくると、その最高に気持ちよくなれる可能性もぐっと高くなるよ、というような提案があっても、まぁスーパーのふつうの値段のやつでいっかなって、僕は思うんじゃないかなと思います。味噌汁やペペロンチーノをてきぱきとつくるのは、気持ちがよいです。気持ちよくつくれたときは、たいてい、うまいです。



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