爆風と自転車カバー

改めて先日の台風の話ですが、夜中に窓が揺れる音、風がベランダを通り抜ける音がすごかったです。朝起きて家の扉を開くと、扉の真ん前、玄関を一歩出たその足が最初に着地する部分に水が溜まっていました。この部分は、地上に限りなく近いところでよっぽど横殴りの風が吹き込むことでもなければ、雨水が溜まることはありません。この部分に雨水がこんなに溜まるのを見たのは、僕がいまの場所に住み始めて初めてのことでした。それほど、強い風が吹いたのです。


玄関前に溜まった水の範囲が広く、またぐことができなかったので、なるべく履きものが水に浸かる面積やら体積やらを少なくしようとつま先立ちで(意味あるか謎ですが)水たまりの中を歩き、家の前に出てみました。おなじようにして、外に出て来て様子を見ている人の姿がいくらかありました。僕の目に見える範囲では、巨大なものが吹き飛ばされたとか、激しく損壊した構造物だとかはありませんでした。家の前のスペースから見えるだけの、狭い範囲についてのことですが。


あとから様子を見に出て来た妻が、「自転車のカバーがない」と言って探しに行きました。妻が言うには数千円するものだそうで、瞬時にあきらめるには惜しい金額だと僕も思ったので、妻が行ったのとは違う方向を探しました。家の隣の公園の階段の踊り場で、僕はそれを見つけました。自転車が停めてあるスペースから、30メートルほど離れたところかと思います。拾った場所と自転車の位置を直線で結ぶと、いくらかの構造物、障害物があります。建物を回り込むような位置関係です。暴力的な風が吹かない限り、自転車カバーがあそこに至ることは決してないでしょう。それでも、まだ短い距離で済んだほうだったかもしれません。


自転車カバーひとつとの再会で喜んでいる僕は、ほんとうに平和に済んだ一人です。千葉のほうなど、ネットを見ましたら、板張りの小屋が根こそぎ地面からはがされて、天地さかさまになって転げている写真が載っていました。学校の体育館の天井なども飛ばされて骨組みだけになっていました。「爆風」を受けたかのようです。


じぶんの目の届いていないところで、想像の及ばないことが起きているのですね。



お読みいただき、ありがとうございました。