大番狂わせの毎日

音楽って勝ち負けがないという話をきのう書きましたが(もちろんコンクールやコンテストは別として)、やっぱり圧倒的なパフォーマンスをしたとか、じぶんのなかでいちばんだったとか、そういう順番づけをひとりひとりのなかでしていたりします。


演者のほうでも、胸のうちできょうの一番はおれらだったなとか、くやしいけどあいつらすごいとか思っていたりします。


フェスなんかにはたくさんのバンドやシンガーやパフォーマー、演奏者が順次、あるいは同時進行で出ます。比べる材料がその日その場所のうちにたくさんあるのです。


ぼくのようなものでも出る機会があるのは、地域のライブハウスやバーなんかでの「対バン形式」のイベントです。「対バン形式」というのは(説明するまでもないかもしれませんが)、ひとつのイベントのうちにいくつものバンドの持ち時間がそれぞれあるような形式をいいます。ひとつのバンドの持ち時間は、出演者数とイベントの総時間によりますが、ぼくの出演してきたものは20〜40分くらいの場合が多かったです。


そんななかで、あのバンドもよかったけどやっぱりこのバンドが一番よかったなとか思うことがあるのです、出演者自身含め。音楽に順位はないとか競技ではなとかいいつつも、その好みによって位置づけられる「いちばん」は、意外とはっきりしている場合が多いように思います。


スポーツは、どんなに僅差だろうと、たとえば得点によって勝敗を決めるスポーツならば、上回ったほうが勝者です。その勝利が、みるもの、戦ったものに、大きな感動をもたらすことがあります。負けた方も、勝ったほうも、同様に、真剣に、全力で戦ったとしても、勝ったときと負けたときとではかなり違った未来があらわれてくる、そんなことが現実に起こっているように思います。


音楽も、どの出演者もおなじくらいに真摯に、実力を発揮して、すばらしいパフォーマンスをみせたとしても、あるひとの胸に深く突き刺さる「いちばん」が、その胸の持ち主、あるいはパフォーマンスした出演者の未来を大なり小なり、違ったものに導くことが起こりうるようなのです。


お読みいただき、ありがとうございました。