勝敗のグラデーション

南アフリカ、強かったですね。


日本が完膚なきまでにねじ伏せられたとも思いません。南アフリカも、完璧な試合をしてみせたのとは違うと感じました。両者がどろどろになりながらぶつかりあった試合だったように思います。身体の芯のつよさ、「猛牛力」みたいなものにおいて、日本を上回っていたなぁと感じました。そして、強烈な突進力だけじゃなく、ひらりくるりと俊敏なキレも見せていた。少しでも日本がすきま、ゆるみ・たるみを見せようものならそこを突き破らんとしていたように思います。こちらの心臓の膜まで裂けそうな気持ちでした。


「どろどろ」といいつつも、もちろん選手たちは冷静に知的に戦っていたのかもしれません。けれど、ところどころで感情的に熱くなっているようにも見えました。私の知らない「文脈」があるのかもしれません。みんなが、何かを「背負って」戦っていたのだと思います。


後半戦の中盤以降は、日本の視点でみるに、ちょっとどうしたものか、もうやりようがないどん詰まりを感じもしました。せめてワントライ観たい、目撃したい、その一心で見守っている私がいました。それを見て、私は何を納得したかったのだろう。仮にワントライを見られたとして、それで満足だったのだろうか。


現実的に、残り時間と照らし合わせて、もう逆転は無理だと感じ始める、その思いが支配的になりはじめるところがどこかにあって、そのグラデーションの中を一定速度でいつのまにか通り抜けてしまいました。夜の闇を照らす競技会場のナイター照明の中に、多くのファンと両チームの選手たちがありました。離れたところに、画面越しに、私もそこにいました。


お読みいただき、ありがとうございました。