谷底のごった煮

東京へ来て、「なんの祭りかと思った」というおのぼりさんがいると聞きます。私は東京出身ですので、この感覚がありません。とはいえ、タマチク出身ですけれど。


渋谷なんぞにはめったに行かないのであります。ヨソの街だなぁという感覚があります。いろんなところから来た人があつまって、ごった煮になっている街。その人たちを相手に、何かやろうとしている人も一緒になって、無数の場ができ、モノがあつまっている。そんなイメージです。


そんなごった煮が、毎日なのですね。それが日常。特別なときだけを抜き出したら、そんな祭りが立ち現れていたのとは違うのです。どこを抜き出しても、ごった煮、ごった煮。これはすごいことだと思います。永遠に続くんじゃないかと思うような、長い祭り。


一日や二日で終わらずに、日常になっているのでしたら、それを祭りというでしょうか? ひょっとしたら、イチバ、シジョウとでも言ったほうが的確なのでは? 渋谷市場なのです。


いえ、買ったり、売ったりだけをしに人びとが集まっているのとも違うので、やっぱり市場では足りません。コミュニティがある。会話が、集いが、カルチャーがある。いくつもの坂の結び合う谷底を中心に、蜘蛛の巣のように広がっている。人がより集まっては、溜まる。お互いを意識しあっている。何かを探しにくる人、漁りにくる人。放っておいてほしいという人には、用のない街かもしれません。


ちょっと見ないあいだに、あれこれの場ができ、ものや人が入れ替わります。私が最後に訪れた時の渋谷は、ガッションカンカンブボボボボとあちらこちらが工事中。久しぶりに様子を見に行きたいなぁと考えております。