まわり終えた日常のかたわらで

よく、手が滑って茶わんの類いを割る。


 ばんばん、壊れている、人々のなかにあって。


壊そうなんて意思はないのに


 毎日、だいたい決まったところに出て行って、仕事をする。


そのつもりはないのに、自分のからだの一部がぶつかったり、はたき落としてしまうなんてこともある。


 仕事が終わったら、毎日決まった建物に帰ってくる。


割れてしまう。割ってしまう。


 おおむね、いつも決まった顔ぶれ。


かけらがちらばる。


 食事のために調理をするから、たくさんの調理器具やら食器やらを出し入れする。


大きなかけらを拾い集めて(手を切らないように)


 はなから壊すつもりはないのに


ちょっと分厚い感じの適当なビニール袋に手早く放り込む。手早くしないと、子どもが寄ってくる(手早くしても)


 いくつかの調理器具やら食器やらの類いを割ってしまう。


大きなかけらは手で拾えるけれど、あとは掃除機をかけて、濡れたぞうきんで床を拭いて、乾いたぞうきんで床を拭いて、さっきの分厚い感じの適当なビニール袋とその中身をごみ捨て場に持って行くまでのあいだ、一時的にそっとしておく。


 ひととおりの食事やら片付けやら家事の類いを済ませたその手が、袋に包まれた種々のあくたを戸外に運び出す。


静かに家の中からいなくなっていったものたちがある。それでもなんとなく、日常はまわっている。




お読みいただき、ありがとうございました。