メシ? お茶? 何が好き? 〜コーヒーとかラーメン〜

私はコーヒーを毎日飲みます。が、コーヒー豆を細かく挽いて、その粉を「がばちょ」と飲み込む訳ではありません。フィルターにセットして、お湯でおいしいところ、入ってほしいところを液にするわけです。抽出ですね。


たとえコーヒーがおいしいといっても、豆をそのままバリバリと食べるのがおいしいのではありません。(チョコレートのかかったコーヒー豆のお菓子があって、それがおいしいという例もあるるでしょうけれど。)コーヒーをおいしく利用するためのプロセスがあるのです。その過程で、削がれる部分もあるのです。


ところで、集団において、どこまで自分をさらけ出せるか、という問題があります。


コーヒー豆に、苦さとかえぐみとか、旨さとか甘みとか香りとか、そもそも殻や膜や果肉や種子などといったいろんな要素があるように、私やあなたという個人にも、いろんな部分・成分があります。たとえば「飲み物として、おいしいのを原材料(コーヒー豆)から取り出す」ということを目的とした場合、しかるべきプロセスがあって、利用する部分とそうでない部分に分けられた結果、コーヒーというおいしい飲み物が生まれてくるのです。そんなふうにして、集団で何かの結果を目指すとか、何かの目的を持って動くというときに、やっぱり、なんでもかんでも個人の味や成分を手当たり次第に出して、入れて、含ませていけばいいというふうにはならないはずです。この線引きが、集団の目指すものがなんなのかが不明であるほどに、難しくなります。


私が、何かを目の当たりにして、「嫌だな」と思うことがあるとします。私が、率直に「嫌だなと思う」ことには、善悪はありませんし、「思いの発生」そのものをあらかじめフィルタリングしてしまうようなことは、洗脳に近い、望ましくないことなんじゃないかとも思えます。ですので、問題は「思いが発生してそれから」です。その思いが、そもそも、私の個人的なバックグラウンドに起因するもので、その思いが生じたきっかけはなんだったのかを私がまじまじと眺めることで、私が良いほうに変化していけるといった場合があります。そのとき、私は、「嫌な思い」が生じたそのときに、「その嫌な思い」を感情的に自己の外側に表出させ、あるいは他の人に対して過剰に批判的・攻撃的にはたらきかけをしないで済んで、よかったと思うのです。


このへんのことから、「自己を開示する」「個人をさらけ出す」ことの有効さを認めるにしても、ただ感情をあらわにすることや、いつもいつも(短いスパンで)自分の欲求を満たすための行動を起こすことがそれにあたるかどうかをいちいち考慮する必要性がなくなるわけではないなと思います。


ただ、お互いが何も出さないとか、みんながお見合いしたままフリーズしてしまったとかでは、何も進みません。なんのために集まっているのかもわからない状態では、さすがにしんどいでしょう。


最低限、「会って話をする場」くらいの共通認識があると、ようやく「誰が、どんなコーヒーが好きかわからない状態」くらいにはなります。で、そこで「じゃ、とりあえずコーヒーでも飲もうか」となった場合、とりあえず何かしらを抽出して、飲み物のかたちにして出すことになります。で、そこから、「私はこのコーヒー好きだなぁ」とか「おれは酸っぱくていやだ」とか言い合えるのです。で、お互いがどんな人か、わかっていきます。


なんでもいいから出さないと、誰のこともわかっていくことができません。けれど、「コーヒー飲もうか」となった場において、「唐辛子で真っ赤に染まった豚骨スープにすりおろしニンニクとラードの雪が積もった丼いっぱいの極太中華麺」を勝手に出したら、ひんしゅくを買うかもしれません。ですが、これほどにずれた事態を避けるのはそんなにむずかしいことではないはず、とも思います。


コーヒーを飲んで談話しながら、「私、あそこの激辛とんこつラーメンが好きなんですよね」「へぇ。私も学生のときは極端なラーメンいっぱい食べたな。今度いってみようかな」などとわかりあっていくのは、いいことに思えます。


「おなかすきません?」と言ってきた相手に、「一緒にラーメン行きません?」と提案できるのはナイスかもしれません。食事を済ませてきた相手と午後に面会したら「コーヒーでもどうですか」がいい提案かもしれません。いずれにしても、小さなことでもいいから相手の状態とか境遇とかがわかると、反応したり提案したりできることが多彩かつ豊かになっていくんじゃないかなと思います。


なんでもいいからまず出すことの必要性と、すでにある環境や個人や集団の状態・情報を読み取って反応を示したり提案したりすることのバランスをとって、行動していきたいところです。



なんの話かよくわからんものを最後までお読みいただき、ありがとうございました。(コミュニケーションとか、コミュニティの話をするつもりだった?)



青沼詩郎