ぞっこんの苦悩と甘美

私は最近、家でエレクトリックベースの演奏を収録しています。


指で直接、太くて固い金属の弦を押さえたりはじいたりするので、ずっと演奏していると指がしんどくなります。指の先や指の腹に、おおきな水ぶくれができてしまうのです。


私は普段、ベースだけを集中的に演奏することはあまりなく、たまにそのベースをまとまった時間演奏すると、大きな水ぶくれを指にこさえてしまいます。


そうなってしまうと、演奏もしづらくなってしまいますし、表皮の下に刺激がつたわって痛みます。


1日以上休んでいるうちに、水ぶくれがひいたり、皮膚が乾いて固くなったりして、痛みはおさまっていきます。


あんまりひどい痛みになる前にやめにして、毎日ほどほどの演奏量にしておけば、翌日もまた、ある程度弾くことができます。


痛くてしょうがないけれどただちに演奏を続けたいときは、指に絆創膏を巻いたり、テーピングをしたりしたこともありました。それで、連日長時間弾き続けるのです。それはそれで成立しないこともないのですけれど、絆創膏やテープで覆ったところは皮膚の感覚やグリップ力がなくなってしまうので、演奏に支障がないとは決していえません。演奏量を分散して、毎日続けたほうが、その感触と認知を保てます。


特定の1日だけ、長時間スタジオを予約した! といった都合は、そのときによってあると思います。集中を発揮することで、結果的に効率が良い場合もあるでしょう。逆に、あれこれとやることを分散してきょろきょろするみたいに、いろんなことを並行してやっていくことによって成せる効率もあるはずです。それが許される環境をつくる努力をするのも、いいかもしれません。そして、何も、いつでも、効率のみを求めることもないはずです。


「ぞっこん」になれるのは、やはり、解放のときを無意識に見越すからなのでしょうか。気持ちよくてぞっこんになるのと、苦しいけれどぞっこんになるのとではまた微妙にちがうかもしれません。苦しいのにぞっこんになるのは、人間だけでしょうか? 他の生き物を、そういう目で観察してみたくなります。



お読みいただき、ありがとうございました。



青沼詩郎