フランスに対して抱いている勝手なイメージをいわせていただくと、多様な価値観を認め合う自由な人たちの国……といった感じでしょうか。料理やらお菓子やら、日本にいてもフランスに由来するものは「おいしい!」「素敵!」と思えるものが多い気がします。
国内で有名な方は、日本にいるとなにかと「見られる側」になってしまうのでしょうね。そのことによって制約されがちなこととか、神経をすり減らしがちなこともあるのだろうと、わからないなりにも想像します。
僕はといえば、どこにでもいる平凡な男です。これといって若くもなければ、老人でもありません。日本にいても、いつでも簡単に「見る側」になれるでしょう。
職場だとかよく行く場所と自宅とのあいだの往復ばかりを続けていると、とくべつ有名人でもないのに、いつでも知っている人(知られている人)に見られている状況になりかねません。そうした状況では、たまに衆人のひとりになって、まわりを気にせず、気にされずにいる時間をつくることが、息抜きになると思います。気がつかないうちに、吸ってばかりいたり、吐いてばかりいたり、呼吸のリズムの重心がだんだん、ずれてきてしまう。意識的にそうしたズレを直せる機会をつくりたいと思います。
そんなことからか、たまに行ったことのない遠い国に行ってみたいな、なんて思うことがあります。まあ、ちょっとひとりになって近所のカフェに行くとか、そんなことでもじゅうぶんなのですけれど、幼い子どもがいる我が家では、ちょっとそういう機会をつくるのもなかなか難しいなと思ってしまいます。
ついつい子どもの存在を、自分をしばるものかのようにとらえてしまいがちです。子どもほど、自由な価値観を有して行動する人たちも、なかなかいないでしょうに。かれらの国に行って、ぼくも「衆人」になって、気にせず、気にされず、心ゆくまで過ごしてみたい。
なんだ、かんたんじゃないか。
いつもすぐそこにあるじゃない。
お金も時間もかからない、衆人旅行です。